コラム
公開 2024.10.03

単体5283_新規_独占禁止法とは?規制内容や罰則、違反しないための対策を弁護士がわかりやすく解説

「独占禁止法」という法律があることは知っていても、どのような内容が定められているかまで理解できていないケースは少なくないようです。

独占禁止法はどのような法律であり、どのような行為が規制されているのでしょうか?
また、独占禁止法に違反した場合、どのような事態が生じる可能性があるのでしょうか?

今回は、独占禁止法の概要について弁護士がくわしく解説します。

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独占禁止法とは

はじめに、独占禁止法の基本を解説します。

独占禁止法の概要

独占禁止法は、正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といい、戦後間もない昭和22年に制定されました。
その後、数度にわたり改正がなされ、現在の形に至っています。

独占禁止法の究極の目的は、「一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進すること」です(独占禁止法1条)。
この目的を達成するため、公正かつ自由な競争を促進し、事業者の創意を発揮させ、事業活動を盛んにし、雇用と国民実所得の水準を高めることとしています。

そして、これを実現するための具体策として、次の内容などを定めています。

  • 私的独占、不当な取引制限
  • 不公正な取引方法の禁止
  • 事業支配力の過度の集中の防止
  • 結合・協定等の方法による生産・販売・価格・技術等の不当な制限、その他一切の事業活動の不当な拘束の排除

独占禁止法について、「業界トップのような一部の大企業の市場独占だけが問題になる」とイメージしていることも多いようです。
しかし、確かにこれも独占禁止法の規制対象の一つであるものの、それだけではありません。

不公正取引の禁止など、中小企業に関連する規制も設けられています。
そのため、知らずに違反する事態を避けるためには、すべての企業が規制内容を理解しておくべきでしょう。

また、下請けの立場となることが多い事業者にとっては、独占禁止法を知っておくことで元請企業などによる不公正な取引などに対抗しやすくなり、自社の身を守ることへとつながります。

独占禁止法と下請法の関係

独占禁止法と混同されやすい法律に、「下請法」があります。
下請法の正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」です。

下請法は、親事業者の下請事業者に対する取引を公正なものとすることで下請事業者の利益を保護し、国民経済の健全な発達に寄与することを目的としています。

独占禁止法で禁止されている「不公正な取引方法」の一つに、「優越的地位の濫用」が挙げられています。
これを防止し、規制を強化するために設けられているのが下請法です。

独占禁止法では、「優越的地位」について明確な定義がなく、優越的地位であるか否かを判断する点が一つのハードルとなりかねません。
一方、下請法では優越的地位であるか否かが、両当事者の資本金額から機械的に判断できるようになっています。

このように、下請法は独占禁止法に関連する取引のうち、特に「下請事業者と親事業者との関係」に着目し、独占禁止法を補完する役割を有しています。

独占禁止法の規制内容

独占禁止法では、どのような規制がされているのでしょうか?
ここでは、主な規制内容について概要を紹介します。

私的独占の禁止

独占禁止法では、「私的独占」が禁止されています(独占禁止法3条)。
私的独占とは、事業者が単独または他の事業者と結合したり通謀したりして他の事業者の事業活動を排除・支配することにより、公共の利益に反して一定の取引分野における競争を実質的に制限することです(同2条5項)。

不当な取引制限の禁止

独占禁止法では、「不当な取引制限」を禁止しています(同3条)。
不当な取引制限とは、事業者が他の事業者と共同して行う次の行為などで、相互にその事業活動を拘束しまたは遂行することにより、公共の利益に反して一定の取引分野における競争を実質的に制限することです(同2条6項)。

  • 対価を決定し、維持し、または引き上げること
  • 数量・技術・製品・設備または取引の相手方を制限すること

いわゆる「カルテル」や入札談合などがこれに該当します。
中小企業であっても、同業などと競合して入札談合などをした場合にはこの規定に抵触することには注意が必要です。

事業者団体の規制

独占禁止法では、事業者団体について一定の規制を設けています。
事業者団体とは、事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする2以上の事業者の結合体そのまたはその連合体のうち一定のものです(同2条2項)。

事業者団体を作ること自体が独占禁止法に違反するわけではありません。
ただし、事業者団体は次の行為が禁じられています(同8条)。

  • 一定の取引分野における競争を実質的に制限すること
  • 不当な取引制限や不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的協定や国際的契約をすること
  • 一定の事業分野における現在または将来の事業者の数を制限すること
  • 構成事業者の機能や活動を不当に制限すること
  • 事業者に不公正な取引方法にあたる行為をさせるようにすること

このように、事業者団体を「隠れ蓑」にして独占禁止法違反にあたる行為をすることは禁止されています。

独占的状態の規制

独占禁止法では、独占的状態を規制しています。
独占的状態とは、その商品やサービスの直近1年間の取引価格が1,000億円を超え、かつ1の事業者の事業分野占拠率が2分の1を超える場合などを指します(同2条7項)。

独占的状態がある場合、公正取引委員会から事業者に対し、事業の一部の譲渡など競争を回復させるために必要な措置が命じられる可能性があります(同8条の4)。

ただし、独占的状態となったからといって、必ずしもこの命令がなされるわけではありません。
その措置により、供給する商品などのコストが著しく上昇する程度にまでその事業者の事業規模が縮小しかねない場合や、競争の回復のために他の措置が講ぜられる場合などには、命令はなされないとされています。

企業結合の規制

独占禁止法では、事業支配力が過度に集中することとなる株式の保有や役員の兼任、合併、分割、株式移転、事業の譲受けが規制されています(同9条など)。
そのため、一定以上の規模にある企業が組織変更などをしようとする際は、あらかじめ弁護士や公正取引委員会などに相談したうえで、この規定に抵触しないか確認しておくべきでしょう。

不公正な取引方法の禁止

独占禁止法では、不公正な取引方法が禁止されています(同19条)。
不公正な取引方法としては、次のものなどが挙げられています(同2条9項)。

  • 正当な理由がないのに、競争者と共同して他の事業者に対して供給の拒絶などをしたり、他の事業者にある事業者への供給などを拒絶させたりすること
  • 不当に、地域または相手方により差別的な対価をもって商品・サービスを継続して供給することであり、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
  • 正当な理由がないのに、商品・サービスをその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであり、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの
  • 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、販売価格などを拘束する条件を付けること
  • 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用し、正常な商慣習に照らして不当な取引を強いること

企業が独占禁止法に違反するとどうなる?

企業が独占禁止法に違反した場合には、どのような事態が生じるのでしょうか?
ここでは、独占禁止法違反により生じ得る事態をまとめて解説します。

措置命令の対象となる

独占禁止法に違反すると、公正取引委員会から排除措置命令がなされる可能性があります(同7条1項)。
排除措置命令とは、行為の差止めや事業の一部の譲渡など、その違反行為を除くために必要な措置を命じられることです。

なお、違反行為がすでになくなっている場合であっても、特に必要があると判断された場合には、その行為が排除されたことを確保するために必要な措置が命じられることもあります(同2項)。

課徴金納付命令を受ける

独占禁止法に違反する一定の行為をした場合、課徴金納付命令の対象となります(同7条の2、20条の2など)。
課徴金納付命令とは、違反行為によって受けた利益の一部を、国庫に納付するよう命じられることであり、違反行為の抑止を目的として設けられています。

なお、課徴金納付命令は公正取引委員会の判断により出すか出さないかを決められるものではなく、一定の条件に当てはまった場合、公正取引委員会が「命じなければならない」とされている点に注意しなければなりません。
ただし、計算された課徴金相当額が100万円未満であるときは、課徴金の納付は命じられないこととされています。

刑事罰が適用される

独占禁止法に違反した場合、刑事罰の対象となることがあります。

たとえば、私的独占や不当な取引制限をした場合、一定の取引分野における競争を実質的に制限した場合の刑事罰は、5年以下の懲役または500万円以下の罰金です(同89条)。
また、排除措置命令などに従わない場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処されます(同90条)。

なお、法人の業務として違反行為がされた場合には、法人も別途罰金刑の対象となります。
法人に課される罰金刑は、たとえば不公正な取引制限の場合で「5億円以下」など、非常に高額に設定されています(同95条)。

損害賠償請求がなされる

独占禁止法に違反し、不当な取引制限などをした場合には、相手企業から損害賠償請求がなされる可能性があります。
なお、相手方の不法行為によって損害を被った場合において損害賠償請求が可能である旨は民法にも規定されており、独占禁止法に特有の規定ではありません。

しかし、一般法である民法を根拠に損害賠償請求をするには、相手側に故意または過失があったことを請求者側(被害者側)が立証しなければならず、これを立証するハードルは高いでしょう。
一方、独占禁止法では一定の違反に対する損害賠償請求が無過失責任とされており、被害者が救済されやすくなっています(同25条)。

企業の信頼が失墜する

独占禁止法に違反し、その旨が報道などにより公となったり公正取引委員会により公表されたりすると、企業の信頼が失墜するおそれがあります。
その結果、取引先が離反するなど、大きな影響が及ぶ可能性があるでしょう。

企業が独占禁止法の違反しないための対策

企業が独占禁止法に違反しないためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?
最後に、独占禁止法に違反しないために講じるべき対策を4つ解説します。

規制内容をよく理解する

1つ目は、独占禁止法の規制内容をよく理解することです。

規制内容を理解していなければ、知らず知らずのうちに違反行為をしてしまうかもしれません。
法律で明文化されている以上、「知らなかった」からといって見逃されるものではないことには注意が必要です。

独占禁止法について理解を深めたい場合は、公正取引委員会のウェブサイトが参考になります。※1

自社には関係がないと思い込まない

2つ目は、自社には関係がないと思い込まないことです。

先ほども解説したように、独占禁止法は、決して一部の大企業だけを対象とした法律ではありません。
たとえ中小企業であっても、公共事業の入札で談合に参加したり新規に参入する事業者を共同して妨害したりすれば、独占禁止法に抵触するおそれがあります※2

また、独占禁止法の規制内容を知っておくことで、自社の身を守ることにもつながります。
そのため、事業の規模などに関わらず、独占禁止法について理解しておくべきでしょう。

社内研修を実施する

3つ目は、社内研修を実施することです。

経営陣が独占禁止法について理解をしていても、支店や部署などが独占禁止法に違反する行為をしないとは限りません。
関連する従業員を対象に社内研修を定期的に実施することで、違反の抑止力となります。

迷った際に弁護士に相談できる体制を構築する

4つ目は、迷った際に相談できる弁護士を見つけておくことです。

自社の行為が独占禁止法に抵触するか否か、判断に迷うこともあるでしょう。
また、他社による独占禁止法に違反する行為により自社が不利益を受けた場合には、法律違反を盾にこれに対抗できる可能性があります。

とはいえ、自社だけで独占禁止法を読み解き、相手企業と交渉することは容易ではないでしょう。
顧問契約を締結するなど独占禁止法について相談できる弁護士を見つけておくことで、いざというときにスムーズな対応が可能となります。

まとめ

独占禁止法の概要と主な規制内容、違反時の罰則などを解説しました。

独占禁止法は、公正かつ自由な競争の促進などを目的とする法律です。
市場独占などが視野に入る大企業はもちろん、中小企業にも関連する規制も設けられています。

そのため、「自社には関係ない」と思い込まず、規制内容を理解しておく必要があるでしょう。
また、独占禁止法を知っておくことで、他社から不公正な取引を強いられた際に自社の身を守ることにもつながります。

独占禁止法に違反しないためには、法令の内容を理解するほか、迷った先に相談できる弁護士を見つけておくとよいでしょう。

Authense法律事務所では企業法務に特化したチームを設けており、独占禁止法についても知見を有しています。
自社が独占禁止法に違反しないための体制を構築したい際や、他社の独占禁止法違反により不利益を被っている際などには、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

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